No.384

そこまで思い出してもこれが何なのかはわからない。何でこのガキと接するたびに楽になるのかもわからない。それにあの時はこんなに苦しくはなかった。苦しかったけど今の方がよほど苦しい。だったらまだ何か思い出せていない何かがある。何だ、それは。
考えながら覇気のなくなったそのガキの目が窓の外に向いている事に気がついて、窓の外を見た。何にも面白いことはない、空しか見えない窓。その窓の向こうをぼんやりと見る目。……この目……どこかで、見たような……。
手を洗っていた。洗っても洗ってもきれいにならなくて、手を洗いながらふと視線を上げた時に鏡に映っていた僕のその目……同じ目……。
何で手を洗っていた、何の汚れが落ちなかった。汚れ……洗い落とさなきゃ……いけない、死がこびりついた右手……。
殺してきた、たくさん殺した、敵は全員殺した、けど殺したのは……敵だけじゃ、なかった……誰かに、守ってくれと託された……。
胸が苦しくなる、呼吸が乱れて、あのときのように胸を抱えて膝をついた。これはだめだ思い出したらだめだこれ以上追いかけたらだめだ思い出したら僕は……僕はきっとどうにかなってしまう。
深呼吸をして、落ち着いて、立ち上がって、……これの正体なんて知らなくていい、だって今までこれと一緒に生きてきた、これからもそうするだけだ、それが一番いいはずだ。思い出したことも全部忘れてしまえ。そうだ、本を読もう、本を開けば、僕はその物語の世界で……。

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