No.383

謎は解けないまま時間だけがすぎて、いよいよ三人のガキを中忍試験に放り込むことができた。と思ったらまた別の問題が立ち上がって、よりにもよってあの死んだガキが標的になった。どんな星の下に生まれついたらそうなるんだよって笑いたくなったけど、このガキの前ではそれは笑いにならない。だってもっとガキの頃に家族や仲間を全員殺されてるんだから。
話の流れで僕の殺す技術をそのガキに教えてやることになった。まあ、教室にこいつがいたのを見た時点でそうなることは予測できていたけどこんなにも早くそういう機会が来るとは思ってなかった。元々頭も良くて強いガキだから割とすんなり技を覚えて実用できる段階まで持っていくことができた。これだけ教えておけば後は放っておいていいだろうとことの成り行きを見守っていたら、二人きりの修行で何か感じたのかそいつはことあるごとに僕を訪ねてくるようになって、僕は仮面をかぶることをやめた。
「弟子が師匠を頼るのはわからなくもないけど、そんなに通い詰める必要ある?」
暗に来るなと言ったつもりだったけどそのガキは何度も俺のところに来ては会話をしたり忍術について聞いてきたり、一応先生という立場であんまり無碍にすることもできなくて応えてやれることには応えていた。
後になってから気がついたことがある。この一度死んだガキが僕を訪ねてくるたびに、胸を締め付けていた苦しさが少しずつ解けていた。
それに気がついたのはそいつの家族や仲間を殺した張本人が何の目的なのか再び里に現れてからだった。
あんなにも殺す事においては自信があったのに僕よりも何歳も年下のそいつに僕は勝つことができたさなかったばかりか、完膚なきまでにやられてしまった。その上、殺されなかった。あのガキも同じらしかった。完膚なきまでにやられて、でも殺されなかった。なぜ殺さなかった。なぜ生きさせた。わからないままそのガキの病室を一応見舞いに行って、ただいつものような意志の強い目はどっかに吹っ飛んだ様子だった。そりゃそうだろう、このガキはあいつを殺すために力を磨いてきたのだから。僕が勝てなかった相手にこのガキが勝てるわけがない。仕方ないよ、そんなの。それよりも気がかりなのは殺されていないことだった。何らかの意図をそこに感じた。でもその意図まではわからない。そしてそのガキが来るたびに胸の苦しさが解けていた事に気がついて、僕はまたこれはどういう事だと悩むハメになった。
そもそもこの苦しさは何なんだ。いつから?思い出せ。いつからかずっと感じていた。そう、このガキと同じくらいの歳の頃から。……いや、違う、もっと前から。いつだ、いつが最初だ。思い出せ。最初にこれを感じたときのことを。
頭の中で時を遡って遡ってひとつの場面が鮮明に蘇る。天井からぶら下がった大きな身体。ああ、これは死んでる父さんを見つけた時だ。でもこの時じゃない。この時は苦しさなんてなかった。そのあと……そのあと。父さんの骨が入った小さな箱を火葬場から家に持ち帰るときに聞こえてきた父さんをなじる声。なじられても仕方がない事をした父さんが悪い。掟を破ったんだから、非難されて当たり前だ。死んだのは父さんが弱かったからだ。そう思いながら家まで帰った。家の中に入ってから、仏壇にその箱を置いて、まだ天井にぶら下がっていた縄を外しながら、父さんが悪い、父さんは弱い、でも僕はそうはならない、僕は強くなるし正しく生きる、そう思っていた時にはじめて胸に違和感を覚えた。あの胸の違和感が、きっとはじめてそれを感じた時だった。

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