No.382

つまんない日々を順調に続けながら顔に張り付けた仮面が馴染んできた頃に僕たちの前に殺すべき敵が現れた。僕の頭の中は歓喜で溢れていてどうやって殺そうかと頭が急速に回転していく。でも後ろにいる三人のガキのことを思い出して画面を貼り付けて安心させてやってからそいつを殺しに行った。結局殺すことに失敗したけどそれはまた殺す機会が現れるという意味でもある。いつ来るかという緊張感を久しぶりに感じて胸の鼓動が早くなる。あいつを殺す、それが俺の役割、早く俺に殺されに来い、そう思いながら待ち続けてあいつはようやく現れた。なんだかお供を連れてるみたいだけど関係ない。一対一に持ち込めば殺せない奴なんていない。久しぶりに人間の身体を貫いた右腕。だけどあいつではなく、それはお供についてた子どもの心臓を貫いていた。
このために連れてきたのか、頭の回る奴だ。でも次は殺す。30秒後にこの右腕が貫いているのはあいつの心臓だ。
そう思っていたらどうやら風向きが変わったらしクソいつは敵ではなくなってしまった。無駄に子どもを一人殺しただけだ。でもまあ、この子どもも忍らしいから敵であることには変わりない。
その次に耳に入ったのはガキどもの声だった。そういえばほったらかしにしてたなと思って様子を見たらひとり死んでた。あれ、あいつ一番強いガキじゃなかったか。なんで雑魚が生きてて強いガキが死んでんの。
その瞬間僕の胸は立っていられないほどぎゅうぎゅうに締め付けられて苦しさに膝をついた。なんだこれ、こんなの、はじめて、……はじめて、……はじめて?本当にそうだった?こんな苦しさは……わからない、けど前にもあった気がする、思い出せない、なんなんだこれ。
深呼吸をして身体を起こしてガキどもの方へ歩み寄った。泣きながら死んだガキを抱きしめてる女のガキが何かに気がつく。そして僕もまた死んでるそいつの異変に気がついた。確かに死んでたはずなのに、息を吹き返している。少しして目を開けたそのガキは口を開いて言葉を口にした。……生き返った?いや、これは最初から……仮死状態だった。すっかり騙されたってことか。胸の苦しみがスッと楽になっていく。もしかしてこの胸の苦しさはは、僕の動揺を表しているのか。いや、それだと説明がつかない。何より色んな仲間の死ぬところを見てきて今更ガキ一人死んだってどうとも思わないはずなのに。あのとき確かに胸はぎゅうぎゅうに苦しくなった。なんで。そもそもこの苦しみはいったいなんなんだ。
自覚してなかった。このとき僕ははじめてその正体のわからない感情と向き合ってその正体を確かめようとしていたことを。無意識のまま考えていた。これは何だと。

keyboard_arrow_up