No.379

僕が感じているこの感覚は言語化することができず長い間僕の胸をぎゅうっと締め付け続けていた。
その正体のわからない何かとの同居にすっかり慣れてしまって胸が苦しいことが普通になって行った。だから僕はどんなこともへっちゃらになった。
どんどん敵を倒して、倒すたびに仲間から翔さんの眼差しを浴びて、それでも同居している胸の苦しさは変わることがなく、大戦が終わって戦う必要がなくなってから僕はまた改めてこの苦しさと向かい合うことになった。
人を殺すこともなくつまらない任務をこなしながらこの胸の苦しさはどんどん存在感を増していく。任務中に見かけた幸せそうな護衛対象の顔を見たら更に胸は苦しくなった。
でも大丈夫、任務には支障ない。僕は出来る、だってあんなに殺してきたんだ。
でもその後も大戦は起きることがなく世間は平和になって行った。あの殺し合いの時代はなんだったんだと思うくらいに気が抜けるほどの平和の中で僕は胸の苦しみと向き合わざるを得なくなった。何もすることがないからそうなるんだと本を買って読むようになった。気を逸らすことさえできればよかった。何冊か読んで、本屋に行って、また読んで。部屋の中に本が増えていくけど内容は頭に入ってこない。次の一冊を、と手にとった本。それだけは、今までの本とは全然違う、何か新しい価値観を僕の中に流し込んでくるような、そんな本だった。

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