No.312

好きだったからこそ、裏切られた気持ちになったし、残っていた想いも消えた
あのとき現れなくてよかったと今では思う
その姿を見てしまったら躊躇いが生じていたかもしれない
けど、あの場に現れなかったおかげで前を向けた
俺の気持ちは変わらないという確固たる想いへつながった。

「離せよ」
「だってそんなんじゃ何も見えないでしょ。」
目を封じている特殊な布。
暗闇の世界。
これが俺には似合いだ。
「ひとりで何とかする。手を出すな。」
この先ずっとこの目を使う機会はないかもしれない。
それだけの罪を犯した。
それはあんたにもわかっているはずだろ。
俺はナルトを、五影を殺そうとしたんだぞ。
その罪は負うべきだ。

「それでも俺はサスケの助けになりたいんだ。」
「かつての弟子だからか?」
「……違う、サスケをまだ想っているから。」
「……白々しい。」

どう声をかけたら伝わるだろうか。それとももう俺の声は聞いてくれないのだろうか。
追いかけたかったけど、出来なかった。それが今になってこんなにも悔やまれるなんて思ってもみなかった。
想いだけでは何も届かない。
もうどんな言葉をかけてもサスケは受け取ってくれない。
もう、俺にこころを開いてはくれない。
サスケを見張りながら様子を観察して危険がないかを確認する。
サスケをどうにかして元の生活に戻せないか散々苦心して各国から出た許可。

火影の元教え子なら、火影が直々に見るのであればとしぶしぶながら了承を得た。
でもこの数年はサスケを別人のように変えてしまった。もう俺の知っているサスケじゃない、サスケはもう俺のことなんてどうとも思っていない。
それを知らしめられるためにサスケをそばに置こうとしたわけじゃないのに、サスケは他人を拒絶してまだなおひとりでいようとする。
力量で言えば片腕がないとは言えもう俺よりも上だ、力づくでどうにかしようなんてこともできない。俺の背中を見せて追いかけてこいという時期はとうに終わっていてサスケは自分の足で歩んで辿り着いた先は冷たい牢の中だった。
S級国際犯罪者になったサスケをどうにかしようとナルトがあちこちに訴えて回っていて俺は俺で火影としての立場を考えながらサスケをどうしてやることがサスケのためになるのかを考えながら辿り着いた目を封じられた状態での俺との同居生活。

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