No.221

わかっていてもカカシの目を見ながらまぐわっているとどうしてもこの思いが溢れ出そうになってしまう。
カカシがそんな目で俺を見るからつい期待してしまうのだ。もしかしたら、僧侶になった後も、と。
僧侶に僧侶がつくなんて今の寺では見たことがない、そんな事はありえない。期待なんてしちゃだめだ。この関係はじき終わるのだから。
そう思いながらカカシを受け入れていると涙が出そうになってしまう。熱くなる目頭をぐっと堪えていつものように振る舞おうにもいつもどうだったかなんて覚えちゃいない。
いっそこの胸の内をぶちまけてしまいたい、泣きながらカカシに縋って離れたくないと喚きたい。そんなことをしても困らせるだけなのはわかっている。わかっているけれどこのまま終わるなんて嫌だと訴えたかった。カカシが好きだ、離れたくない、そう言えたならどれだけ胸のわだかまりがなくなることだろう。
刻一刻とその日はどんどん近づいていて、いよいよ残り一週間を切るとカカシは俺に手を出すことをやめてしまった。
どうして。
なんで。
カカシなりのケジメなのだろうか。
カカシは俺と視線を合わせることさえしなくなってしまった。
相変わらず勉学は熱心に教えてくれている。しかし俺の顔ではなく書物に視線を落としながら書かれている内容を補足する。
この記述に至った背景には斯様な出来事があり……説明するカカシの言葉を残らず拾って筆を走らせながら、こころに虚無が生じているのを感じていた。そしてその虚無は数日後、もっと大きくなっていることだろう。夢と引き換えに俺は大切なものを失う。仏様が目の前にいたとすればそんな俺に何とお声をかけて下さるだろうか。
人を愛しむことは正しい事だと教わった。それであればカカシは……カカシは俺とのまぐわいをやめることはなかっただろう。つまるところ遊びではないとは言えカカシにとって俺の存在は慈しむほどのものではなかったという事だ。
虚無が大きくなって行く……。

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